2025年9月2日、OpenAIは製品実験プラットフォームを提供するスタートアップ、Statsig を約11億ドル(全株式交換)で買収することを正式に発表しました。これに伴い、Statsigの創業者でありCEOだったVijaye Raji(ヴィジャイ・ラジ)氏が、OpenAIの新設ポジションである「Applications CTO(CTO of Applications)」に就任します 。
なぜStatsig買収なのか?その狙いと意義
Statsigは、A/Bテスト、機能のフラグ管理(Feature Flagging)、リアルタイムな意思決定支援など、迅速かつデータ駆動でプロダクト改善を実現する実験プラットフォームです。OpenAI自身も開発にStatsigを活用しており、今回の買収はその即応力強化を内製化する意図が背景にあります 。
Applications CTOとしてRaji氏が担う役割とは?
Vijaye Raji氏は、ChatGPTやCodexといった製品のプロダクトエンジニアリング全体を統括する役割に就きます。具体的には、インフラ・コアシステム・Integrityチームとの連携など、開発の全体最適化をリードする責務が与えられます。彼が報告するのは、Applications部門の責任者であるFidji Simo氏です 。
Simo氏はコメントで、「Raji氏には、スケールする消費者向け製品・B2B製品の構築実績がある。彼のリーダーシップが、AIの進歩を安全で人々に喜ばれるアプリケーションへと変えていく力になる」と強調しました 。
組織再編の動きも同時展開
今回の買収に伴い、OpenAIは組織にも大きな変更を行っています:
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Srinivas Narayanan氏が「CTO of B2B Applications」に昇格し、スタートアップ・企業・政府向けAIアプリの技術統括を担います 。
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Kevin Weil氏はCPOを退き、研究部門へ異動。「VP of AI for Science」として科学分野でのAI応用を推進します。Mark Chen氏(Chief Research Officer)の下で活動する予定です 。
買収後のStatsigチームの扱いはどうなる?
買収後もStatsigはシアトルに拠点を置いたまま独立運営を続け、「現在の顧客サポートや開発体制を維持しつつ統合を進める」とOpenAIは伝えています。社員はOpenAIに加わりますが、事業の継続性が確保された形となる見込みです。
実験 → 実用化への戦略的転換
OpenAIによるStatsig買収は、単なる技術ポートフォリオの拡充ではなく、**“AI研究成果を迅速に安全な製品へ変える体制構築”**への大きな布石です。Raji氏の起用とApplications部門の強化を通じ、OpenAIはGPT-5以降の“実務への応用”を加速させようとしています。
AI競争が激化する中、データ駆動の実験文化と安心して使えるアプリ開発力の融合が、今後のAI活用で差を生む鍵となるでしょう。